絶対に知っておくべき、認知バイアスを利用した9つのマーケティング訴求手法
こんにちは、DAIです。
日々マーケティングを勉強していると、いたるところで認知バイアスが利用されています。
認知バイアス(にんちバイアス、英: cognitive bias)とは、認知心理学や社会心理学での様々な観察者効果の一種であり、非常に基本的な統計学的な誤り、社会的帰属の誤り、記憶の誤り(虚偽記憶)など人間が犯しやすい問題である。また、これが動因となって虚偽に係る様々なパーソナリティ障害に付随するため、謬想ないし妄想などを内包する外延的概念に該当する。転じて認知バイアスは、事例証拠や法的証拠の信頼性を大きく歪める。(Wikipedia)
そこで、今回はマーケティングでいかに認知バイアスが利用されているのか、まとめてみたいと思います。
この記事は、認知バイアスを利用して消費者をだまそう!という意味ではなく、
- マーケターとしては訴求方法を上手に学ぼう
- 消費者としては、認知バイアスによって誤った意思決定をしないようにしよう!
という趣旨で書いています。それではいきましょう。
目次 (PRも含まれます)
①アンカリング効果
アンカリング効果の意味
アンカリング効果とは、最初もしくは同時に提示された特定の特徴や数値(価格)、情報が印象に強く残ってしまい、意思決定や判断に影響をおよぼす傾向のことです。消費者が購入を意思決定する場合には、相対的な価格、性質などを基準にして購入します。
※注)
※注)画像はSNS、ブログ等に自由に引用してかまいません!その際、かならずこの記事のURLを明記してください!
アンカリング効果が利用される具体例
ジャパネット・タカタを見ていると、ほとんど最初の価格ではなく、限定価格で割引で販売します。これは、最初にみた価格を基準に、次の価格の意思決定をしてしまう認知バイアスを利用しているわけですね。
アンカリング効果のバイアス
アンカリング効果は、発信者にとって意図的に有利な比較を行わせるので、消費者としては正しい対象で比較しているか判断することが大事です。例えば、PCが9万円のものが5万円で販売しているとしても、他社商品という比較軸や、スペックなどの比較軸等、自身の基準を明確にして商品購入の意思決定することが必要です。
アンカリング効果で注意する点
マーケティングで利用する場合、二重価格について注意する必要があります。
例えば、¥56,000の商品を、¥12,000 で販売する場合、過去に¥56,000でその商品を販売していたこと、さらに¥12,000をいつからいつまでにするのか明確に示さないと、不当表示に該当する恐れがあります。
同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない価格を比較対照価格に用いる場合には、当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかなどその内容を正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがあります。 >消費者庁:二重価格表示
参考サイトも載せておきます。
②バンドワゴン効果
バンドワゴン効果とは、みんながいい!と言っているものを無思考でいいと思う認知バイアスです。
バンドワゴン効果(バンドワゴンこうか、英: bandwagon effect)とは、ある選択肢を多数が選択している現象が、その選択肢を選択する者を更に増大させる効果。「バンドワゴン」とは行列先頭に居る楽隊車[1]であり「バンドワゴンに乗る」とは時流に乗る・多勢に与する・勝ち馬に乗る[2]という意味である。(Wikipedia)
バンドワゴン効果が利用される具体例
よくあるのは、具体的な実績を出すことで、「みんながいいと思っている感」を出すことです。
- 顧客満足度98%
- hogefuga大学合格者数〇〇人
- 転職実績〇〇人
- 飲食店の定員数を少なくして、常に並んでいる状態にする
などと、「みんながいいと思っている感」を伴った数字で利用されます。
バンドワゴン効果のバイアスから逃れる方法
バンドワゴン効果を利用する場合、後述するほかの多くの認知バイアスとともに利用される場合が多いです。例えば、以下のようなものがあります。
- サンプリングバイアス:転職エージェントに応募した人全てではなく、転職に成功してインタビューに答えてくれた人だけに顧客満足度を聞いた顧客満足度
- 確率バイアス:転職エージェントに応募した人数が1万人、そのうち100人、つまり転職成功率1%なのに、絶対数だけで判断してしまう
『「みんながいい!」と思っている根拠は、基本的にマーケターが適当な数字を持ってきて訴求しているんだ!』くらいの意識で商品購入の意思決定するのが大事かと思います。
また、誰がどの立場でレビューしているのか(広告主からお金をもらってレビューを書いているかもしれない)のも意識する必要があるかと思います。
③サンクコスト(埋没費用)
サンクコスト(埋没費用)とは、「投資した分は取り返さないと!」と後に引けなくなってしまう認知バイアスです。
埋没費用(まいぼつひよう、英: sunk cost 〈サンクコスト〉)とは、事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のこと[1]。(Wikipedia)
サンクコストが利用されるシチュエーション
サンクコストが利用されるシチュエーション
- クレーンゲーム:ある商品を手に入れるために、投資した分は絶対に当てるまで投資し続けてしまう
- パチンコ:収支をプラスにするために、回収するまで続けてしまう
- 情報商材:成功するためには、あと〇〇万円払う必要があります!と言われ、後に引けなくなる
- ガチャ:あたりが出るまでずっと課金し続けてしまう
サンクコストの認知バイアスから逃れる方法
おおよその賭け事は期待値計算することで、試行回数を増やしていけば絶対に損する仕組みになっています。ただし、期待値計算できない人の場合は、サンクコストが働いて認知バイアスでずるずると投資し続けてしまうことになります。
確率論をしっかり勉強することが、サンクコストという認知バイアスから逃れる方法になるかと思います。
④ハロー効果
ハロー効果とは、ある特徴とほかの特徴を勝手に関連づけてしまう認知バイアスのことです。
ハロー効果(ハローこうか、英語: halo effect)とは社会心理学の用語で、ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと。後光効果、ハローエラーともいう。例えば、ある分野の専門家が専門外のことについても権威があると感じてしまうことや、外見のいい人が信頼できると感じてしまうことが挙げられる。ハロー効果は、良い印象から肯定的な方向にも、悪い印象から否定的な方向にも働く[1][2]。(Wikipedia
ハロー効果が利用される例
ハロー効果が利用される例としては、
- 大学教授、著名人、エンジェル投資家などの名前
- リーディングカンパニーへのサービスの導入実績
- 世界的な有名なメディアへの掲載実績
- インフルエンサー・マーケティング
などがあります。
ハロー効果の認知バイアスから逃れる方法
そのサービス、ヒトの実績と、その人を支援する人の権威との相関性はあまりないことを意識する必要があるかと思います。
⑤少数の法則、アポフェニア
少数の法則(アポフェニア)とは、限られた一部の意見などを、過大に一般化してしまう認知バイアスです。
アポフェニア(英: apophenia)とは、無作為あるいは無意味な情報の中から、規則性や関連性を見出す知覚作用のことである[1]。1958年にドイツ人の心理学者クラウス・コンラッドが統合失調症の前駆症状を詳細に記述し、患者が最初に妄想を経験したという事実を反映するために、(ギリシャ語のapo [離れた場所] + phaenein)新語を作り出した[2]。(Wikipedia)
もともとは統計学でいう、「大数の法則」から来る言葉です。大数の法則とは、簡単に言うと、サイコロを無限に回し続けると、どの出る目も1/6に収束するというお話なんですが、「少数の法則」では、「サイコロを2回ふったら連続して1が出たので、100%の確率で1がでるサイコロだ!」と結論づけてしまう認知バイアスになります。
少数の法則(アポフェニア)が利用される例
少数の法則(アポフェニア)が利用される例としては、以下の通りです。
- サービスの一部の成功者をランディングページに取り上げ、サービス全体の品質を一般化する
- 成功者の一例を、どんな人にも当てはまるかのようにマーケティングする
などがあります。ここ最近だと、「東大に3人入れた親が子どもに恋愛させなかった」みたいな本を出版しました。認知バイアスが働くと、その本を読んで、「たった一人の東大生の親」の意見を信じて、子どもに恋愛させないみたいな行動をとるようなことになります。
少数の法則(アポフェニア)のバイアスから逃れる方法
統計学を勉強すると、ある程度試行回数(=サンプル数)がないと、一般化できないことが分かります。このバイアスも、しっかりと確率論を勉強することが非常に重要です。
また、併用される認知バイアスとしては、後述する
- 因果、相関の混合:恋愛をさせなかったことと、東大に3人合格させたことは、1サンプルの相関現象でしかないのに、因果で説明すること
などがあります。
⑥絶対数と確率の混同バイアス
絶対数と確率の混同バイアスとは、成果としての数が大きいと、それが確率的に高まってしまうと勘違いしてしまう、認知バイアスです。
絶対数と確率の混同が利用されるシチュエーション
絶対数と確率の混同を利用したシチュエーションは、以下のような例があります。
- 宝くじ売り場:その会場での購入者数が多く当選数が多いだけなのに、「この会場は当たりやすい」と結論づけてしまう
- 進学塾:生徒数が多いので合格実績が多いだけなのに、「この塾は質が高い」と結論づけてしまう
絶対数と確率の混同バイアスから逃れる方法
以下のことを意識することが必要です。
- その実績の母集団はどのくらい大きいのか。確率で見るとどれくらいなのか
- 期待値はどれくらいか
⑦因果・相関の混同
因果・相関の混同とは、直接的な因果関係ではないことを、あたかも因果関係のように説明する認知バイアスです。
例えば、「海水温が上がると、アイスクリームが売れる」という相関現象があります。一方で、「海水温が上がったから、アイスクリームが売れる」分けではありません。
- 相関による説明:海水温が上がると、アイスクリームが売れた
- 因果による説明:海水温が上がったから、アイスクリームが売れた
正しい因果関係は、
- 気温が上がると、海水温が上がる
- 気温が上がると、アイスが食べたくなるのでアイスクリームが売れる
ですね。最初の「海水温が上がると、アイスクリームが売れる」を因果でとらえてしまうと、アイスを売るためにひたすら海を暖める施策を取るかと思いますが、あくまでも海水温とアイスの売れ行き自体の因果関係はありません。(このように裏の要因が二つの現象に影響を与えていて、それら二つの現象に関係があるような状態を疑似相関と呼びます。)
因果・相関の混同が利用される例
因果・相関の混同は、教育ビジネスでは多く散見されます。例えば、「偏差値が高い私立高校に行くと、有名大学への合格実績がよい」という相関関係があるとします。これを
- 偏差値が高い私立高校に行くと、学校教育の質が高いので、有名大学への合格実績がよい
- 偏差値が高い私立高校に行くと、もともと地頭がよく自分で勉強できるから有名大学への合格実績がよい
- 偏差値が高い私立高校に行くと、親が教育投資を行うので、有名大学への合格実績がよい
などと、いろいろな因果関係が考えられるわけですが、世の中一般的には一番わかりやすい相関関係を因果因果で見る傾向があり、「①学校の教育の質」が因果として結びつくことになります。しかし、一般的にはスクールビジネスでの実績に一番大きく貢献するのは、「どれだけ優秀な生徒を青田刈りして入れられるか」が実績に大きく貢献します。
消費者の見え方としては「①学校の教育の質」ですが、実質因果関係になっているのは②入学(塾)する生徒のスペックと③親が教育熱心で教育支出が高い が大きいです。
因果・相関の混同から逃れる方法
あるものが因果関係で語られているかどうかを意識し、そのうちそれが相関ではないか疑うことが大事かと思います。
⑧サンプリングバイアスによる一般化
サンプリングバイアスによる一般化とは、本来対象にすべき人がきちんと考慮されていないサンプルによって、母集団の性質を一般化してしまう認知バイアスです。
サンプリングバイアス – 不適切な標本抽出によって、母集団を代表しない特定の性質のデータがまぎれこんでいること。(Wikipedia)
サンプリングバイアスによる一般化が利用される例
サンプリングバイアスによる一般化を利用したマーケティング手法としては、以下のような例を挙げられます。
- 転職エージェント:応募→面接→内定までのフェーズで、途中脱落した人にはアンケートをとらず、内定者のみにインタビューした結果を顧客満足度として載せる
- 高専の就職実績:卒業するまでには半分が中退している中、最後まで生き残った人の就職実績だけをカウントして、就職率100%と載せる
https://twitter.com/nemo50737280/status/1086908707689000960
サンプリングバイアスによる一般化のバイアスから逃れる方法
サンプリングバイアスによる一般化に関しては、以下の視点でデータを見る必要があります。
- 一般化するべき事象が、本当にその母集団をすべて含んでいるのか
- サンプリングの方法が、強制的によい答えを出さざるを得ない状況かどうか
サンプリングバイアスを利用する際の注意
優良誤認と取られるケースもありそうなので注意しましょう。
参考)
>悪質な広告行為への分析姿勢が必要:わかりやすいnoteでした。
>消費者庁表示対策課,”景品表示法における違反事例集”,2016,: 消費者庁公式です。
参考:景品表示法の優良誤認とされる事例と罰則|正しい広告表示を行うには?|ベンナビIT
参考:No.1表記と景品表示法!当社調べのNo.1広告は有効?|薬事法マーケティングの教科書
⑨希少性原理
希少性によるバイアスとは、発信者が意図的に希少性を訴求することで、無条件にその商品の価値を上げてしまうバイアスです。
希少性原理とは、資源・財貨・サービスの経済的価値はモノの希少性に依存しているという原理です。簡単にいえば、数が少ないものほど価格が高くなるということです。(Brave Answer)
人間は基本的に、希少価値が高いものに対してあこがれます。例えば
- 宝石
- バーゲンセールの商品
この希少性原理を訴求することによって、必要以上にそのモノ、ヒトに価値を感じてしまうのが希少性原理です。
希少性原理が利用される例
希少性原理が利用される例としては、以下のような例が挙げられます
- 期間限定:〇〇日までに申し込むと、〇〇%オフのような、割引キャンペーン
- 数量限定:数量限定で先着〇〇名限定のような数量限定キャンペーン
ただし、マーケティングの文脈の場合は、景品表示法について意識する必要があります。
希少性原理から逃れる方法
希少性原理を疑うポイントは、以下の通りです。
- 果たして本当に希少性が高いのか。発信者側が限定にしているのは、本当に希少性が高いのか、希少性を高く見せたいだけなのかを問う
- 希少性が高いことを置いておいて、本当にその商品、サービス自体が価値が高いのかどうか(バーゲンセールだからと言って買ってないか)
⑩ダブルバインド
無理やり2択の選択肢を与えることで、どっちかを選択せざるを得ないように訴求する方法です。
たとえば、アフィリエイト広告でのCTAでは、
- 公式ホームページに移動する
- 申し込みする
と2択を選ばせることで、その二つのうちどちらかを選択させようとします。(結果的には同じページに飛ぶにもかかわらず。)
その結果、そもそも「アフィリエイト広告主のサイトに行かない」という選択が見えなくなります。
最後に
ということで、認知バイアスを利用したマーケティング情報について解説しました。
マーケターの方は用法・用量を守ってお使いいただけると嬉しいです。また消費者としては、認知バイアスに自覚的に消費をするといいのではないでしょうか。
さらに多くのマーケティングに使える心理学を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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