QAエンジニアがやめとけと言われる理由とは?実体験を元に現役エンジニアが解説

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  • QAエンジニアの仕事が大変で、やめとけと言われる理由は何か
  • QAエンジニアの仕事にはどのような課題があるのか
  • QAエンジニアとして働く際の注意点は何か

という疑問を持っている方向けに、この記事では、

  • QAエンジニアのキャリアアップがやめとけといわれる理由
  • QAエンジニアに向いている人の特徴
  • QAエンジニアの仕事のやりがい

など、QAエンジニアが「やめとけ」と言われる理由について解説します。

QAエンジニアの仕事が「きつい」「やめとけ」と言われる背景には、キャリアアップの難しさや年収アップの問題、単純作業の多さなどの課題があります。しかし、求められるスキルの習得やキャリアパス、転職活動によって、QAエンジニアとして充実した仕事を見つけられる可能性があります。QAエンジニアへの理解を深め、自身に合った働き方を見つけることが重要です。

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QAエンジニアが「きつい」「やめとけ」と言われる理由

QAエンジニアの仕事は大変で、「きつい」「やめとけ」と言われる理由はいくつかあるようです。

・キャリアアップしづらいから
・年収が上がりづらいから
・単純作業が多いから
・エンジニアとコミュニケーションがしんどいから
・テスト自動化によって手動テストのケースが減っているから
・テストアプリの発達でテスト自動化エンジニアの需要が減っているから
・裁量権がほとんどないから
・長時間労働や残業時間が多いから
・1人作業が多く疎外感を感じやすいから

それぞれについて、詳しく解説します。

キャリアアップしづらいから

QAエンジニアの職場では、キャリアアップしづらいことが大きな理由と言われています。

ソフトウェアを自社で保有していない会社でQAエンジニアとして働くと、昇給やスキルアップが難しいです。特にSESでQAエンジニアとして活躍している会社では、このような傾向が強く現れる可能性があります。

SESなどの現場では、特定のソフトウェアのテストケースを実行するだけで、案件が終了してしまうことが多いです。つまり、テストケースの作成やテスト品質向上、テスト自動化に着手する前に、テスト業務が終了してしまうことが多く、使い捨てのような扱いを受けることもあります。

年収が上がりづらいから

QAエンジニアのキャリアアップが難しい点も、QAエンジニアの仕事が「きつい」「やめとけ」と言われる理由の1つと言えます。QAエンジニアとして実際に仕事をしていると、この職種の給与水準には大きな差があるように感じます。

QAエンジニアの年収は、一般的に300万円~500万円程度です。自社開発におけるテスト計画の立案やテスト自動化テストなどテスト体制を整えた経験があれば、フリーランスとして時間給6000円や8000円(年収700万~800万円)の収入を得られる可能性があります。一方で、テストケースに沿って単に実行するだけでは、スキルの希少性が上がらず、収入アップの可能性も低くなります。

ただし、QAエンジニアの年収は企業によってかなり差がある印象で、全体的に低いわけではありません。QAエンジニアとしてより様々なスキルを身につけられる企業や、QAエンジニアとしてキャリアアップが期待できる企業に入社すれば高年収が期待できます。また、テストマネジメントや自動化テストといった分野での経験は、ソフトウェアの質的向上に大きく貢献するため非常に重宝されます。

つまり、QAエンジニアとして高収入を得るためには、市場で役立つスキルや知識を習得することが重要です。ハイスキルを持つ人材は、Webエンジニアより不足している傾向にあることから、高い年収を望める場合があります。大手ベンチャー企業のメルカリやUbieでは、QAエンジニアの職が設けられており、その場合は年収が高いことが多いです。

単純作業が多いから

テストケースに沿ったテストを行うという単純作業が多いことも、QAエンジニア「きつい」「やめとけ」といわれる要因の1つだと考えられます。

ネット上でもこうした業務に対する批判的な声が多数あがっていますが、1日中エクセルの項目に「テスト完了」と報告するような仕事を長年続けているが、給与が全く上がっていかないケースもあります。実際の業務は単なるチェックだけなので、非常に単純な作業となるのが現状です。単純な業務が主体となると、給与アップや昇進が難しくなるというデメリットもあるでしょう。

確かにQAエンジニアの業務の中には単純作業が含まれていますが、それだけが全てではありません。なかには、単純作業のだけでなく、別の業務を任されるケースがある企業もあります。

DAI
私が勤めていた会社では、単純作業だけではなく、別の仕事に携わることも多かったので、単純なものはほとんどなかったです。

エンジニアとコミュニケーションがしんどいから

さらにもう1つの理由として、エンジニアとのコミュニケーションがしんどいということがあげられます。

以前のエンジニアと比べると、今の日本のエンジニアの質はとても向上していて、コミュニケーション上の問題に悩まされることが少なくなってきています。しかし、昔ながらの企業では、エンジニアの中に人間性に問題のある人が多いのは事実で、コミュニケーションに苦労することも多いのが現状です。

些細な点を追及したり、専門用語ばかり使って相手に伝わりにくかったりする、面倒くさい行動をとるエンジニアがたくさんいます。そのような人と交流すると、メンタル面での負担が大きくなることもあります。

どの職場でも、エンジニアとのコミュニケーションは重要不可欠です。そのため、面倒なエンジニアとの対話を避けるためには、ソフトウェアの質が高い会社や、利益を上げている企業を選ぶのがよいでしょう。そのような会社ではエンジニアの質も高いため、精神的な負担が解消されるかもしれません。

テスト自動化によって手動テストのケースが減っているから

手動テストの仕事が徐々に減っていくことで、テスターの将来性がないという声もあります。QAエンジニアの主な仕事はテストを手作業で実行することが多いですが、毎日同じように行うようなテストに関しては、プログラムで自動化する場合が多いです。

テストの自動化が進むと単純作業が不要になるので、QAエンジニアの役割が無くなるのではないかという声が出てきています。ソフトウェアの自動テスト機能がどんどん発展していけば、単純作業の仕事が失われていくでしょう。

一方で、QAエンジニアの役割は単なるテストの実行だけではありません。本来は、新たなバグを高い割合で発見できる探索テストに時間を使います。また、使いにくい箇所についてユーザーの意見をくみ取り、サービスの改善することも重要です。更には、品質保証に関する本質的な業務に専念していくことが求められます。

つまり、テスト自動化によってQAエンジニアの仕事が減るわけではありません。質の高いテストを行えないのであれば、テストの自動化をする意味はありません。つまり、テストに精通した人がテスト自動化のプログラムを作成していくことになるわけです。

テストアプリの発達でテスト自動化エンジニアの需要が減っているから

もう1つは、テスト自動化のためのプログラミング自体が、QAエンジニアの成長につながるということが考えられます。そのため、テスト自動化エンジニアの雇用が減少しつつあるという説もあります。

テスト自動化の分野では、Rubyやパイソン、Javaといった言語を使い、Seleniumなどのツールを活用するのが一般的でした。この状況は2010年代前半までが続いていましたが、最近では、コードを必要とせず、ブラウザ上でテストの自動化ができるサービスである「Mable」などが登場しています。

そういった理由から、LayerXやnoteなどの著名なソフトウェア企業においても、プログラミングコードによる自動テストの代わりに、ブラウザ上での操作を通じてWebアプリケーションからテストコードを増やしている状況です。その結果、テスト自動化エンジニアの将来性がないという声が上がっているのが現状です。

DAI
テストの自動化が進んでも、テスターの役割は必要不可欠だと私は考えています。

テスターやQAエンジニアの本当にやるべきことは、製品をリリースする前にできるだけ多くの新しいバグを発見し修正し、ユーザビリティを改善してクレームを減らすことです。自動テストを書くことは、新たなバグを見つけるよりも、既存のバグが繰り返し発生しないようにするためだけのもので、それほど優先順位の高い作業とは言えません。

探索的なアプローチによってバグの洗い出しや新たなテストケースの設計、UX的な改善提案を行うことが、QAエンジニアにとって大きな価値を生み出すと考えられます。

さらに、Mableのようなウェブアプリを使ってテスト自動化を行おうとしても、テスト設計の知識がなければ、高品質なテスト自動化は実現できません。その結果、ソフトウェアテスティングの仕事は減少しないと判断できます。

自動テストの自動化技術を持っていれば、QAエンジニアとしてフリーランスで活躍できる事例もあります。ただし、テスト設計の知識も不可欠です。QAエンジニアの仕事は、今後も有望な職種と考えられ、良い将来性があるといえるでしょう。

裁量権がほとんどないから

QAエンジニアの仕事には、裁量権がほとんどないため、「やめとけ」と言われることがあります。QAエンジニア1人だけでは、エンジニアとの交渉や、システムリリースの遅延、自分の仕事範囲以外のことまで要求するのは難しい状況となります。そのため、「やめておけ」と指摘する人もいるでしょう。

しかしながら、これらの問題は働き方や職場の雰囲気、そして本人に対する評価によって変化するものです。通常、裁量権がないのは、SES企業から派遣されてきたQAエンジニアや、派遣社員として働くQAエンジニアに多くみられます。

エンジニアの業務内容は、発注側によって大きく左右されることが一般的です。そのため、クライアントの指示に沿って作業を行うことが多く求められています。それ以上のことは発注側の社員が担うので、自分に与えられた権限は得られにくいでしょう。

しかし、QAエンジニアだからといって、必ずしも裁量権がないわけではなく、環境次第でいくらでも裁量権を得られる可能性があります。QAエンジニアとして実績を重ねてキャリアアップすることで、チームのまとめ役や部署間の連携を担うマネージャーに就くこともあります。リーダー職や管理職になれば、業務上での裁量権も増えるでしょう。

QAエンジニアの裁量権が少ないというのは一概に言えません。むしろ、それは個人の立場によって異なるものといえます。

長時間労働や残業時間が多いから

QAエンジニアが「やめとけ」と言われる大きな理由の1つは、長時間労働や残業時間が多いからといわれています。

QAエンジニアが業務に取り組む際にはテスト計画が立てられ、どのようなテストをいつまでに、どの程度の工数をかけて完了させるかが決められています。しかし、テスト計画と実際の進捗が一致しない場合、リリースまでにたくさんのテストケースに対応する必要が出てくることがあります。

とはいえ、すべての職場で長時間労働を強いられるというわけではありません。プロジェクトリーダーのレベルが高ければ、テスト計画の見積もりや工数管理が徹底されているため、過剰な長時間労働や残業が増えることはほとんどないでしょう。

DAI
私が以前勤めていた会社では、テスト計画がしっかりと決められていて、テストの実行に際して長時間労働や残業はほとんどありませんでした。

つまり、どのような企業に勤めるかで、長時間労働や過度の残業が発生するかが決まります。テスト工程に重点を置いている会社で働いている人は、長時間労働や残業が少ない傾向があるでしょう。

1人作業が多く疎外感を感じやすいから

QAエンジニアは1人作業が多く、疎外感を感じやすいのが、「やめておけ」と言われる理由の1つです。

テストの際は、与えられたドキュメントに沿って、UIの検証を行うのが一般的です。そのほとんどが、一人でじっくりと取り組むタイプのテストになります。私が経験した現場でも、テスト中は他人との対話がほとんどなく、実作業に専念するような状況でした。

しかし、テスト後は進捗の共有やリーダーとのコミュニケーション、個別面談などが行われていました。確かに一人で作業をしていた時は孤独を感じていましたが、チームがいると孤独感はそこまで大きくならなかったです。そのため、QAエンジニアに限らず、所属する組織の形態によって孤独感を感じやすさが大きく変わると考えられるでしょう。

例えば、SES企業からQAエンジニアとして1名が派遣され、その人物は受け入れ企業の正社員チームの一員として、テスト業務を行うという構図です。その場合は、コミュニケーションを取るのが難しくなるでしょう。QAエンジニアであることによって、必ずしも疎外感を感じるわけではありません。このことは理解しておきましょう。

QAエンジニアに向いている人の特徴

ここでは、QAエンジニアとして向いている人材について説明しています。

以下のような特徴を持つ人は、QAエンジニアとして向いていると考えられます。

  • バグ探しが好きな人
  • 細かいチェックが得意な人
  • ドキュメンテーションの能力がある人
  • 同じことの繰り返しをできる人
  • ITの知識がある人
  • コミュニケーション能力がある人

以下では、QAエンジニアに向いている人の特徴について詳しく解説します。

バグ探しが好きな人

バグ探しが好きな人は、QAエンジニアに向いている人材といえます。ゲームのバグを見つけたり、秘密の裏ワザを探す人は、得意といえるでしょう。

バグ発見は、探索的テストを実施する上で必要不可欠な技能です。直感的に「このシステムには脆弱性があるのではないか」と感じる人もいるでしょう。

DAI
実際に前の職場では、普段の業務の中で自然とバグを発見する超能力者のような上司がいました。

細かいチェックが得意な人

QAエンジニアに向いている人の特徴の1つは、細かなところまで慎重にチェックできることです。テストドキュメントを確認し、個別のテストケースをしっかりと見て、ドキュメントや手順書に書かれた期待値や流れを検証する場面で役立ちます。

UIチェックでは、細かな部分まで気を配って徹底的に検証することが非常に重要です。

DAI
正直、私は細かいUIの差分やチェックが十分にできず、上司から叱責されることもしばしばありました。

ドキュメンテーションの能力がある人

次に、ドキュメンテーション能力です。文章力と伝達力に優れた人は、QAエンジニアの仕事に向いていると考えられます。

たとえば、何らかの不具合が発生した時に、提出したドキュメントを見ればエンジニアがそのバグを再現できるかどうかは非常に重要な点です。一方で、相手に伝わらない文章を書いてしまうと、メッセージの内容が理解されずに、余分な問い合わせが発生してしまいます。

テスターの主な使命はソフトウェアのバグを発見し、報告することなので、それができないと仕事で大きな障害となります。説明書やマニュアルを作成するのが得意な人は、テスターの仕事に非常に向いているといえるでしょう。

同じことの繰り返しをできる人

同じ作業を繰り返し正確に実行できる人は、QAエンジニアに向いていると言えるでしょう。

QAエンジニアの仕事では、製品のリリース前にスモークテストを行います。スモークテストは製品の各リリースの際に実行されるテストのことで、テスター自身が手動で実施します。スモークテストのような退屈な繰り返し作業でも抵抗がなく、毎日同じことを正確に続けられる人は、QAエンジニアにピッタリです。

逆にテストの繰り返し作業が苦手な人は、QAエンジニアの仕事に向いていない可能性があります。

DAI
個人的には、このような繰り返し作業がとても苦手でした。スモークテストを続けていると、途中から文章が理解できなくなり集中力が散漫になり、仕事のスピードが低下したことを覚えています。

ITの知識がある人

ITの知識がある人や、ソフトウェア業界での経験がある人はQAエンジニアに向いています。

QAエンジニアの業務は主にソフトウェアを対象としているため、ソフトウェアの基本的な知識が必要不可欠です。ログイン、ファイル操作、ExcelやGoogleドキュメント、Wordなどのオフィスソフトウェアの使用スキルは必須です。さらに、テストの内容によってはプログラミングの経験も求められることがあります。セキュリティに関わる機能をテストするには、その機能の使い方を把握していなければ、正しいテストを行うことができません。

一方、プログラミングスキルが極端に高いと、ユーザー視点でのテストが行いづらくなることがあります。ユーザー目線を大切にする上では、エンジニアの事情を無視して、ある程度の知識制限も大切だといえるでしょう。テストの内容は柔軟に対処し、ITに関する知識はある程度備えておくことが望ましいといえます。

コミュニケーション能力がある人

QAエンジニアには、高いコミュニケーション力も必要です。相手の言葉を理解し、自分の考えも相手に伝えられるような双方向のコミュニケーション力が重要です。

コミュニケーション能力は、QAエンジニアにとって極めて重要で、多くのケースでこのスキルが必要とされます。例えば、バグを発見した場合、速やかにエンジニアやカスタマーサポートに報告するケースなどです。バグを報告する際は、バグの再現手順や、ユーザーが指摘しているバグについての分析結果を、エンジニアやカスタマーサポートが理解しやすいように説明する必要があります。

ここでいうコミュニケーション能力には、対面での会話だけでなく、チャットによるコミュニケーションも含まれます。

QAエンジニアの仕事のやりがい

ここでは、QAエンジニアとしての実務経験から、QAエンジニアが感じられるやりがいについて述べていきたいと思います。

インシデントを防げた時に、貢献できていることを実感できる

QAエンジニアとしてのやりがいは、重大なインシデントを未然に防げた時にあります。バグを発見し、致命的なトラブルを食い止められるのはやりがいを感じる瞬間ですね。予想外の場所でも致命的なバグが見つけられたときは、大きなやりがいを感じます。

私は個人的には以下ような経験をしました。

ログイン機能が搭載されたシステムを構築した際に、重要なセキュリティ上のバグが判明しました。早期発見できたため、リリース前に修正することができました。もし自分がバグ見逃していたら、サイバー攻撃の対象となり、情報流出などによる損害賠償を請求される危険性もあったでしょう。

このようにビジネスの大きな損失を事前に防ぐという、非常に大切な役割もあるのです。

プログラミングスキルや開発スキルが身に付く

QAエンジニアをやっていると、プログラミングスキルや開発スキルが身に付くことにもやりがいを感じられます。

ドキュメントに沿ったテストを実行するだけではなく、製品の質を保ちながら少ない数のテストケースでより多くのバグを発見できるよう、そのような工夫を凝らすことが重要になります。

深く追求していけば、かなり専門性の高い仕事になるため、しっかりと勉強を重ねることで多くのことを学べるはずです。

他の部署の人に感謝された時

自分が発見したバグ修正が他部署の人から感謝されると、大変やりがいを感じます。

バグを発見して報告した後、「わかりやすい報告したおかげですぐに修正できた」と言われたことは、とてもうれしい経験でした。

QAエンジニアが求められるスキル

QAエンジニアとしての職務を遂行するには、これらのスキルが求められます。

  • 報告のスキル
  • 正確にテストを実施する能力
  • サービスを利用する人への知識や想像力
  • 学習意欲
  • セキュリティスキル
  • オフィスソフトの知識
  • マネジメントスキル

以下では、それぞれのスキルについて詳しく解説していきます。

報告のスキル

QAエンジニアとして現場に入る時は、報告するスキルが不可欠です。

バグ報告時には、事実と解釈を明確に分けて記述することが重要な点になります。例えば、バグの再現時には、具体的な操作手順を説明し、その操作によってUIがどのように変化したか、そしてどのようなエラーが発生したのかを詳細に述べることが重要です。

また、問題の根源がバグであるのか仕様の一部であるのかを判断することも大切です。事実と解釈が混ざってしまうと、バグと仕様の違いが分からなくなり、エンジニアとの対話が難しくなることがあります。だからこそ、事実と解釈を分けて説明する「報告・連絡・相談」のスキルは非常に重要なのです。

DAI
エンジニアに対し、意図通りの動作をバグだと報告すると、非常に怒られます。

正確にテストを実施する能力

QAエンジニアには、正確性も求められます。

テストを行う際は、既存のテストドキュメントをもとに、いかに正確に実行できるかが要求されます。QAエンジニアには、これまでに準備してきたテストケースを抜かりなく丁寧にテストし、その成果を報告しなければなりません。

注意力が散漫だとテスト手順通りに進められず、テストの正確性が疑われ、結果的に製品の品質を維持することができなくなります。テストドキュメントの記載内容を正確に実行する能力は、表面的には単純ですが、実は非常に重要なスキルなのです。

エンドユーザーに対する理解力

QAエンジニアには、実際にサービスを利用するエンドユーザーに対する理解力も求められます。

例えば、ユーザーがログインを行うケースで考えてみましょう。

  • IDとパスワードを正しく入力したケース
  • IDだけを入力してパスワードは入力しないケース
  • IIDを入力せずにパスワードだけを入力したケース
  • IDは合っているけどパスワードが間違っているケース
  • ログインボタンを連打するケース

このほかにも様々なパターンが考えられるでしょう。

QAエンジニアにとって、このようなパターンを考えることが、重要なスキルの1つになります。パターンを考えることによって、さまざまなケースを想定したテストを実行できるようになり、製品の信頼性を高められます。

エンドユーザーの理解度を上げるのは、後に獲得できるスキルの1つです。ユーザーとのインタビューや商談に参加することで、ユーザーをより理解でき、スキルが身に付きます。

学習意欲

QAエンジニアがテストドキュメントに沿ってテストを実行するだけの場合、さほど難しいスキルは必要とされません。一方で、自身でテストケースを作成するには、広範囲にわたる知識が求められます。

ソフトウェアテスティングは学習が難しい領域の1つで、深く学習することが難しい分野といえます。テストに対する興味がない人は継続的な学習が続かず、QAエンジニアとしての生き残ることが難しい可能性もあります。

セキュリティスキル

QAエンジニアの重要なスキルの1つに、セキュリティスキルがあります。

QAエンジニアの主な業務は、ユーザーが実際に使用する観点からシステムをチェックし、バグを特定することにあります。一方で、データの不正アクセスや、サービスの妨害を企むハッカーに対する対策も重要です。これらの脅威に適切に対処できるよう、万全の準備をしているかを確認することが必要不可欠です。

そのため、QAエンジニアの中でもセキュリティに特化した人材はセキュリティエンジニアとして呼ばれ、専門的なキャリアパスを築くこともあります。セキュリティエンジニアには、セキュリティに関するテストの設計力が重要です。

例えば、ログイン用のフォームに対して総当たり攻撃を試み、IDとパスワードを不正に入手できるかをテストすることなどです。さらに、ハッカーがデータベースからクレジットカード情報を盗もうとしてサイバー攻撃を行うことがあるため、そうしたリスクに備えてテストを行います

近年、企業においても情報セキュリティの重要性が高まってきており、適切な対策を取ることが必須事項といえます。セキュリティに関する知識を身につけることで、QAエンジニアとしてより活躍できるようになるでしょう。

オフィスソフトの知識

基本的な知識ですが、オフィスソフトの知識は必ずといっていいほど重要です。

QAエンジニアの主な仕事は、基本的にドキュメントの作成です。たいていの場合、ドキュメントの作成にはExcelやWordといったオフィスツールが用いられることが多く、それらの基本的な使い方は最低限習得しておく必要があります。

特にテストケースの作成においては、エクセルの操作能力が不可欠といっても過言ではありません。QAエンジニアを目指す上で、表計算ソフトの基本的な操作ができるようにしておくべきでしょう。

マネジメントスキル

将来的にQAマネージャーなど管理職を目指すのであれば、マネジメントスキルは欠かせません。

QAマネージャーのキャリアには、チームメンバーへの具体的な作業指示や、プロジェクトの進捗管理能力が求められます。しかし、QAエンジニアの職に未経験から就く場合には、すぐに必要とされないかもしれません。

DAI
マネジメントスキルがあれば良いといった感じですね。

QAエンジニアの平均年収

以下では、QAエンジニアの平均年収について解説しています。

QAエンジニア未経験者の平均年収

QAエンジニアの未経験者の場合、一般的な平均年収は250万円~350万円ほどだと考えられています。未経験の方がQAエンジニアを目指す場合、主に2種類の企業に進むことになります。

  • チェックリスト通りにテストを行ってもらう枠を提供する会社
  • QAエンジニアとして育成を前提に採用する会社

未経験からQAエンジニアとしてのキャリアを積み、SESの会社で活躍しながら昇進していくと、給与があまり伸びないのではないかという印象があります。その理由は、チェックリストに従ってテストを実行するという業務は、特別な技術がなくても誰でも行えるため、そのような仕事に就くのは簡単といえるでしょう。そのような環境では個人のスキルが上がらず、給与を上げる必要はないと考えられます。

一方で、新卒社員の育成に力を入れている企業や、人材教育に積極的に投資している企業では、経験を重ねていけば年収500万円~600万円を目指すことも可能です。

QAエンジニア経験者の平均年収

QAエンジニアとして経験のある正社員の平均年収は、厚生労働省が運営する「job tag」によると約550万円ほどとされています。

企業によって経験者の年収にはばらつきがありますが、以下のような経験があると年収が上がる可能性が高いでしょう。

  • テストケースの追加・改善
  • テスト計画を作成
  • 自動テストを導入し
  • QAエンジニアのマネジメント

そのような能力と継続的な実績があれば、年収600万円~900万円を目指すことができるでしょう。特にシニアQAエンジニアやQAマネージャーになれる人材が不足しているため、そのようなキャリアを目指せば期待以上の年収が得られるはずです。

フリーランスQAエンジニアの平均年収

フリーランスQAエンジニアは扱う案件によってバラつきがありますが、平均すると45万円から75万円ほどになることが多いでしょう。

しかし、フリーランスでこの月収を得るには、QAエンジニアとしての十分な経験が必要です。テスト設計や品質管理の経歴があると、高い年収を得られる可能性があります。

また、フリーランスの領域では、QAエンジニアのニーズが極めて高いです。そのため、QAエンジニアの実務経験がある人は、フリーランスとして活動することを考えてみてもいいでしょう。

QAエンジニアは未経験でもなれるのか

基本的に、QAエンジニアは未経験からでもなれます。

もちろん、学歴や年齢で選ばれないケースもありますが、SESなどであれば20代~40代でもQAエンジニアに転職することは難しくありません。具体的に何かしらの準備が必要かということもなく、やる気と最低限の社会人スキルがあれば、未経験でもQAエンジニアになれるでしょう。

ただし、良いQAエンジニア・キャリアアップできるQAエンジニアとして転職できるかというと、話は少し変わります。ソフトウェアテスティングに対して多く投資している会社で、QAエンジニアとして能力を身につけやすい会社であれば、大学卒業の学歴はある程度必要です。特に日本を代表するメガベンチャーで働く場合は、高学歴も求められるでしょう。

また、IT業界の経験や、テストに関する書籍を自分で読んでいるという経験があると、未経験の人でも採用されやすい可能性もあります。

年齢による就職難易度ですが、20代の人はすぐにQAエンジニアに転職しやすいです。もちろん、30代の人も頑張れば未経験でも転職は可能になります。一方で40代になると、SESの会社などでなければ難しいかもしれません。その場合、派遣会社でQAエンジニアになるという形になると思います。

QAエンジニアがきついと感じた場合の対処法

QAエンジニアが仕事の負荷に苦しんでいる場合、以下の対処法を検討すると良いでしょう。

  • 仕事の充実度を高めるためにスキルを取得する
  • キャリアパスについて考える
  • 転職活動をする

現在 QAエンジニアとしての仕事が大変だと感じている方は、ご参考までに以下のことを確認してみてください。

仕事の充実度を高めるためにスキルを取得する

QAエンジニアとしての仕事がきついと感じた場合、その対策としてスキルを習得し、仕事の充実度を高めましょう。QAエンジニアの業務が「きつい」と言われる原因のひとつは、裁量権がなく、単純な作業を繰り返し行うことです。ドキュメントに基づく単純な作業の繰り返しだけでは、仕事に対する喜びを見出すことができません。そのため、スキル習得によって仕事の質を高めることがおすすめです。

QAエンジニアには、報告のスキルやテストを正確に行うスキルなど、様々なスキルが必要とされています。必要なスキルを向上させることで、単純作業だけでなく、QAマネージャーやプロジェクトマネージャーといった上位の役職に就くことができます。そうすれば、チーム全体の管理運営なども任される可能性が高まります。

QAエンジニアの仕事量が増えていけば、業務の充実度が高まり、単純作業や裁量権の少なさから感じられていた「きつさ」が軽減されると考えられるでしょう。

キャリアパスについて考える

QAエンジニアの仕事がきついと感じた場合、キャリアパスついて考えることも1つの方法です。QAエンジニアのキャリアパスは、主に2つに分類できます。

  • QAエンジニアとして昇格していく
  • QAエンジニアと別領域の能力を広げていく

QAエンジニアの知識と経験を生かせる昇進先としては、QAマネージャーやプロジェクトマネージャーなどがあります。QAマネージャーやプロジェクトマネージャーの主な役割は、テストの工程管理とスケジューリングです。また、新人エンジニアの育成支援も担当しています。

QAエンジニアの業務に加えて、プログラミングなどの異なる分野の能力も高めたいなら、プログラマーもおすすめです。

DAI
私の経験では、QAエンジニアから独立して、独学でプログラミングを習得し、自社で採用したエンジニアの指導を受けながらプログラマーになりました。しかし、このようなプロセスを経るケースは特殊であり、通常の会社では、QAエンジニアがプログラマーに異動することは少ないと考えられます。

プログラマーを目指すのであれば、QAエンジニアで得たスキルに加えて、プログラミングの知識も必要になります。QAエンジニアとしてのキャリアパスを検討すれば、「きつい」という気持ちがが「意欲」や「やりがい」につながり、仕事に全力で取り組むことができるでしょう。

転職活動をする

QAエンジニアの仕事がきついなら、他の職を探すのも選択肢の1つです。自分に合った仕事先を見極めるには、様々なポイントを確認しましょう。

  • キャリアアップのしやすい会社か
  • 単純作業以外に別のタスクに従事しているか
  • 質の高いQAエンジニアがいるか
  • 長期労働や残業時間が多くないか
  • 年収が希望額に合っているか

キャリアアップが転職の目的なら、QAエンジニアとしてのスキルを拡げられる会社に転職することをおすすめします。そのような会社に転職すれば、キャリアアップによる年収アップが期待できるでしょう。

テストの他にも別の業務を担当していたり、質の高いエンジニアがいる企業かどうかも、自分に合った転職先かを見極める際のポイントになります。転職を成功させるには、まず自分の目的を明確にし、興味のある企業が自分に合う仕事内容や給与水準かを確認してみましょう。

まとめ

今回は、QAエンジニアが「きつい」と言われる理由について解説しました。

QAエンジニアの仕事が「きつい」「やめとけ」と言われる背景には、キャリアアップの可能性が低く、年収の伸びも期待できないこと、そして単純作業が多いことが主な原因です。

しかし、これらの課題は決して QAエンジニアの仕事の本質的な問題ではありません。適切なスキル習得や、キャリアパスの検討、転職活動によって、QAエンジニアとしてのやりがいを最大限に引き出すことができます。

QAエンジニアの仕事は単なるテスト業務だけではなく、ソフトウェアの品質向上に大きく貢献する重要な役割を担っています。今回の記事が、QAエンジニアの本質的な価値について理解を深める一助となれば幸いです。

「QAエンジニアはやめとけ」というマイナスイメージを払拭し、QAエンジニアの魅力的なキャリアを見つけてみてください。