QAエンジニアとは?詳しい仕事内容や役割を解説
- QAエンジニアの業務内容とは?
- QAエンジニアの役割は?
- QAエンジニアとほかの職種の違いは?
という疑問を持っている方向けに、この記事では、
- QAエンジニアの具体的な仕事内容
- QAエンジニアが求められるスキル
- QAエンジニアの仕事に役立つ資格
について解説します。
この記事では、QAエンジニアの仕事内容や役割を詳しく紹介し、QAエンジニアとしてのキャリア理解を深めてみてください。
目次 (PRも含まれます)
QAエンジニアとは
QAエンジニアの仕事は、ソフトウェアやシステムの品質を確保するため、開発が完了したものに対してテストを行うことです。つまり、製品の品質保証がQAエンジニアの主な仕事になります。
QAは「Quality Assurance」は、製品やサービスの品質を保証する取り組みを意味し、「品質保証エンジニア」と呼ばれることもあります。
テストエンジニアとの違いは?
QAエンジニアに似ている職種が「テストエンジニア」です。品質管理の仕事には異なる役割がありますが、企業によっては両者の違いを明確に区別していないこともあります。
テストエンジニアは、主にテスト業務に特化しているのに対し、QAエンジニアはテストから品質保証までを担当しています。
テスターとの違いは?
テスターとQAエンジニアの違いについては、明確な定義が存在しているわけではありません。通常、テスターの主な仕事は既存のテストドキュメントに基づきテストを実行し、その結果を報告することです。
QAエンジニアは単にテストを実行するだけでなく、テストケースの作成・テスト計画の立案・品質保証・テストの自動化といった、テストに関するその他の業務も行います。
QAエンジニアの役割
QAエンジニアとは、Webアプリケーションを使用する顧客のために、サービスの品質を確保することが仕事です。QAエンジニアが存在しない世界を想像してみましょう。
通常、Webアプリケーションを制作する企業には、プロジェクトの指揮を取るディレクター・技術面の実装を行うエンジニア・ビジュアルデザインを担当するデザイナーといった専門家が在籍しています。ディレクター層が、作るアプリケーションの仕様を決めて提示し、それに沿ってエンジニアやデザイナーがシステム開発を行うのが一般的な流れです。
製品に問題がないかをしっかりと検査し、確認するのがQAエンジニアの主な責務です。製品を顧客に提供する前の最後の検査役がいないと、公開後に重大な問題が発生してクレームにつながりかねません。この大きな問題が発生するのを防ぐためには、製品リリース前に適切な対策をとることがQAエンジニアの主要な業務となります。
QAエンジニアの仕事内容
「品質を保証する」と表現されますが、QAエンジニアにはそれ以外にもやるべきことが数多くあります。以下では、QAエンジニアの主な仕事の内容を紹介します。
テストケースの作成
サービスの品質を確保する際は、まずテストケースを作成します。テストケースとは、ユーザーが特定の入力したときに期待される結果をまとめたドキュメントのことです。
説明だけではわかりづらいため、実際にある会員制アプリのログイン機能のテストケースを例に見てみましょう。
【テスト】
- 正しいIDとパスワードを入力した時に、ログインできること
【手順】
- https://example.com/loginにアクセスする
- ログインフィールドに以下の値を入れる: example@example.com
- パスワードに以下の値を入れる: password
- ログインボタンをクリックする
【期待値】
- ログインに完了しましたというフラッシュアラートが表示されること
【結果】
このように、テストケースには本来あるべき「期待値」と「手順」「結果」が記載されています。QAエンジニアが行うべき業務の1つは、サービスの正しい動作を確認するためのテストケースを設計することです。つまりこれは、想定された通りにデータが入力された場合に、決められた動作がしっかりと動作するかをチェックする作業です。
ちなみに、例に出したテストケースは「正常系」と呼ばれるもので、本来期待される正しい入力に対するテストとなります。
一方で、テストケースには他にも様々な種類があり、例えば次のようなものがあります。
【テスト】
- ログインIDとパスワードを入れないでログインしようとすると失敗すること
【手順】
- https://example.com/loginにアクセスする
- 何も入力せずにログインボタンをクリックする
【期待値】
- 「IDとパスワードを入力してください」と表示されること
この不適切な値を用いたテストは「異常系」と呼ばれ、先ほど説明した正常系のテストと併せて、重要なテストケースの一つであると言えます。
例えば、ログイン画面でユーザーIDやパスワードを一切入力せずにログインボタンを押すと、何も表示されないケースもあります。システムにバグがあると、ユーザーが「使えない」と感じ、問い合わせ件数の増加や、サービスを利用してもらえない可能性があります。
そのようなトラブルを避けるにはユーザーの多岐にわたる使い方を考え、本来の機能が正しく実装されているかを確認しつつ、テストケースを設計する作業が必要不可欠です。
テストケースの実行
QAエンジニアの仕事には「テストケースの実行」もあります。これは大半の人が思い浮かべるQAエンジニアのイメージに近いでしょう。例えば、さまざまなテストケースの結果を丁寧に記録し、まとめていくことが求められています。
【テスト】
- 正しいIDとパスワードを入力した時に、ログインできること
【手順】
- https://example.com/loginにアクセスする
- ログインフィールドに以下の値を入れる: example@example.com
- パスワードに以下の値を入れる: password
- ログインボタンをクリックする
【期待値】
- ログインに完了しましたというフラッシュアラートが表示されること
【結果】
- OK
【テスト】
- ログインIDとパスワードを入れないでログインしようとすると失敗すること
【手順】
- https://example.com/loginにアクセスする
- 何も入力せずにログインボタンをクリックする
【期待値】
- 「IDとパスワードを入力してください」と表示されること
【結果】
- NG(何も表示されなくなった)
このようなテストケースはエクセルなどにまとめられていて、それぞれの結果をOKかNGかでまとめていく仕事です。テストケースに沿った期待通りの値が返されないと「バグ」と認識され、バグを発見したら開発者に報告して修正対応をする必要があります。
テストケースの運用・改善
テストケースの運用・改善は、QAエンジニアの重要な業務の1つです。テストケースの作成は1回限りではなく、プロジェクトが進むにつれて常に見直しと改善を重ねていく必要があります。
例えば「登録済みのログインアドレスを、再登録できないようにしてほしい」という要望がある場合は、既存のテストケースに加えて新たなテストケースの組み入れが必要です。さらに、すでにテストが完了している機能に対して変更があった際は、そのテストケースも見直す必要があります。
つまり、テストケースをたった一回作成したからといって終わりではなく、常に改善を加えながらテストケースを適切に維持し続けることが重要です。
テスト計画の作成
マネージャークラスのQAエンジニアになると、テスト計画の作成という業務が増えていきます。
テスト計画の作成とは、決められた期限までにどのようなテストをどれほどの工数をかけて、いつまでに完了させるかを計画する仕事です。
探索テストの実行
QAエンジニアの仕事には、探索テストの実行があります。探索的テストとは、顧客の様々な使い方を想定しながら、「ここにバグがあるのではないか」というのを、無作為にテストを実施する作業です。
例えばログイン機能に対して探索テストを実施する際は、これまでのテストケースとは別に、更新ボタンを100回連続して押し続けた時の動作などのケースを想定します。
そういった状況では、テストで下記のような事態が起こる可能性があります。
- 画面が固まってしまう
- 同じアカウントが100個生成される
- 2回連続で一気に作ろうとするとアカウントが2つ生成される
あらゆる状況を想定しておくことで、このようなバグを未然に防ぐことができます。また、探索的なテストの実行時にセキュリティ上の脆弱性を発見するためのテストも行われます。
たとえば、ユーザーがIDとパスワードを入力すると、そのメールアドレスがすでに登録されている場合は「そのメールアドレスは既に存在します」と表示されます。また、メールアドレスが存在しない場合は「IDとパスワードを入力してください」と表示される仕様になると仮定しましょう。しかし、前者の場合ではメールアドレスが存在することになり、パスワードを総当たりで試せば不正アクセスできる可能性もあります。つまり、メールアドレスが登録されていることが悪意のある人物に知られてしまうため、悪用されるリスクが高くなるということです。
そのためQAエンジニアは、セキュリティの観点で問題がないかをハッキングしながらテストを実施することも仕事です。
テスト自動化
QAエンジニアの仕事には、テストの自動化も含まれます。テスト自動化とは、事前に準備したテストドキュメントをソフトウェアを使って自動でテストを実行していくものです。
エンジニアが新機能を導入したとき、QAエンジニアが手作業でテストを行うと作業に膨大な時間を要してしまいます。そのような何度も同じ動作を行うようなテストについては、自動化のためにソフトウェアを活用することが求められることがあります。
例えば、先ほどのログインのテストを自動化する場合で考えてみましょう。プログラミング言語(Ruby、Python、Java等)を使えば、Seleniumのようなブラウザを自動で操作可能なライブラリを利用して、ログイン欄への値設定やパスワードの更新といった工程を自動化することができます。
テストを自動化する重要性
テスト自動化は、QAエンジニアだけでなくWebエンジニアも行うことがあります。
テストには、
- 単体テスト
- 結合テスト
- 受け入れテスト
の3つがあります。
単体テストと結合テストは、主にユーザーが目にする画面を経由するものではなく、裏側のシステムをを1つ1つテストしていくものです。そのため、これらのテストはWebエンジニアが実装することが一般的です。一方で、受け入れテストはUI側(ユーザーが目にする部分)のテストなので、通常はQAエンジニアが担当することが多いです。
例えば、IDやパスワードといった入力処理の部分は、Webエンジニアだけでのテストでは抜け落ちる可能性があります。その場合、QAエンジニアが追加でテストを行うことがあります。そのため、何度も繰り返しテストを手動で行うのは大変な作業になるため、自動化したほうがスムーズです。
また、最近の傾向として、「Autify(オーティファイ)」や「mabl(メイブル)」といった、プログラミングを書かずにブラウザ上の操作でテストを書けるツールが利用されるようになってきました。そのため、自動化ツールの活用によりテストが楽になるため、ツールの使用スキルも問われる機会が出てくるでしょう。
テスト結果の報告 / 開発部門への品質改善提案
全てのテストが完了したら、テスト結果の報告を行います。テスト結果に基づいて、「バグ」あるいは「要望」として報告を提出するのが一般的な方法です。
- 想定した仕様通りではない場合:バグ
- ユーザーにとって不便ではないかと疑問が生まれた場合:要望
たとえばバグの場合は「○○の手順で期待値を想定したのに、結果は××になった」というように報告します。報告はチケット管理というシステムを使って行い、自分以外のエンジニアと共有することが一般的です。
このテスト結果の報告は非常に重要で、エンジニアがすぐ対処できるよう、また問題がどのように再現するのかを明確に記述することが必要です。優秀なQAエンジニアは、この報告書を上手に作成します。
また、バグ以外でも異常系のテストをした際に、ユーザーへのレスポンスが不足していた場合など、ユーザーに分かりやすく明示的に書いて報告することも重要です。テスト結果を共有する際には、「GitHub」、「Jira」、「Redmine」などのツールがよく使われています。
QAエンジニアが求められるスキル
QAエンジニアとしての働くためには、以下のスキルが求められます。
- 報告のスキル
- 正確にテストを実施する能力
- サービスを利用する人への知識や想像力
- 学習意欲
- セキュリティスキル
- オフィスソフトの知識
- マネジメントスキル
各スキルについて詳しく解説します。
報告のスキル
QAエンジニアとして働くには、報告のスキルが重要です。特にバグ報告時には、「事実と解釈」を明確に分ける必要があります。例えば実際にバグを再現する際は、行動に対してUIがどのように変化したか、さらにはどのようなエラーが発生したかを具体的に説明することが必要です。
そのほかにも、問題かバグか仕様かを判断することも重要になります。事実と解釈が混ざってしまうとバグと仕様の区別がつかず、エンジニアとの対話が難しくなることがあります。そのため、事実と解釈を明確に分ける「報告・連絡・相談」の能力は非常に大切です。
正確にテストを実施する能力
QAエンジニアには、正確性にテストを実施する能力も求められます。テストを実施する際は、すでに作成されているテストドキュメントを参照しながら、いかに正確にできるかが問われるためです。
QAエンジニアはこれまでに準備してきたテストケースを抜かりなく丁寧にテストし、その成果を報告することが求められます。注意散漫だとテスト工程を手順どおりに行えず、テストの正確性が問われてしまい、製品の品質維持ができなくなることもあるでしょう。
テストドキュメントに書かれた指示を正確に実行できる能力は、簡単なようで実はとても重要なスキルです。
エンドユーザーに対する理解力
QAエンジニアには、エンドユーザーに対する理解力も必要です。
例えば、ユーザーがシステムにログインするケースで考えてみてください。
- IDとパスワードを正しく入力したケース
- IDだけを入力してパスワードは入力しないケース
- IIDを入力せずにパスワードだけを入力したケース
- IDは合っているけどパスワードが間違っているケース
- ログインボタンを連打するケース
など、この他にもさまざまなパターンがあります。
QAエンジニアにとって、このようなパターンを検討することが大切なスキルの1つです。ユーザーの行動パターンを考えることで、さまざまな場合を想定したテストを実行できるようになり、製品の信頼性を高められます。
ユーザーの理解を高めるスキルは、後から身に付けられるスキルです。ユーザーインタビューや商談に参加すると、ユーザーが困っているポイントを見抜く力が身に付きます。
学習意欲
QAエンジニアが、ただテストドキュメントに沿ってテストを実行するだけなら、あまり難しいスキルは必要ではありません。しかし、自身でテストケースを作成するには、幅広い知識が求められます。特にソフトウェアテスティングは深く学習することが難しい領域といえるでしょう。
テストに対する関心がない人は学習を継続することが難しく、QAエンジニアとしての生き残ることも難しいケースもあります。
セキュリティスキル
QAエンジニアの重要なスキルの1つに、セキュリティスキルがあります。
主にQAエンジニアはユーザーの使用を想定しながら製品をテストし、バグを見つけ出すことが仕事です。一方で、データの不正取得やサービス妨害を企むハッカーに対して、しっかり対策ができているかを確認することも必要になります。そのため、QAエンジニアの中でもセキュリティ分野に特に精通した人物は「セキュリティエンジニア」と呼ばれ、専門的なキャリアパスを歩むことも可能です。
セキュリティエンジニアには、セキュリティ関連のテストを設計する能力が重要とされます。例えば、ログイン フォームに対して総当たり攻撃を行い、IDとパスワードを不正に取得できるかをテストするなどです。さらに、ハッカーがデータベースからクレジットカード情報を不正に抜き取ろうとする「スクリプト(SQLインジェクション)」を入れられるかのテストも実施します。
近年、企業の中でもセキュリティ意識が高まっており、専門性を高めればQAエンジニアとしてより活躍できるようになるはずです。
オフィスソフトの知識
基本的な知識ではありますが、QAエンジニアにはオフィスソフトウェアの知識も必要です。
QAエンジニアは、主にドキュメントを作成することが仕事になります。通常、ドキュメントはエクセルやワードといったオフィスソフトで作成することが多く、それらの基本操作は最低限必要なスキルです。特にテストケースの作成においては、エクセルの操作能力が不可欠といっても過言ではありません。
マネジメントスキル
将来的にQAマネージャーなどの管理職を目指す場合、マネジメントスキルは必須です。また、QAマネージャーとしてチームを率いる上で、テスターへの具体的な計画をアサインするなど進捗管理のスキルも必要になります。
一方で、QAエンジニアとして未経験から始める際は、今すぐに取り組む必要がないかもしれません。
QAエンジニアの仕事に役立つ資格
QAエンジニアとしての仕事を得るためには、以下の資格取得が一般的に推奨されています。
- 基本情報技術者試験
- JSTQB認定テスト技術者資格
- IT検証技術者認定試験(IVEC)
- ソフトウェア品質技術者資格
- 応用情報技術者試験
- QC検定
それぞれの資格について、詳しく解説します。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、独立行政法人IPAが主催する国家試験です。ITエンジニアの基礎を持っているか確かめる資格で、IT業界を目指す人は持っていて損はないでしょう。
基本情報技術者試験に合格すると、IT業界における基本的な知識とスキルを有していることを証明できます。さらに、IT業界で仕事するうえで求められる資格取得の基盤にもなるため、スキルアップにもおすすめです。
試験は科目A試験・科目B試験の2部門に分かれていて、科目A試験は90分・科目B試験は100分です。この2つの試験はどちらも1,000点満点で、それぞれ600点以上取れば合格となります。
合格率は約40%とそこまで高くはありませんが、IT業界で活躍したい方におすすめの資格です。
JSTQB認定テスト技術者資格
JSTQB認定テスト技術者資格は、各国のテスト技術者認定組織が参加しているISTQB(International Software Testing Qualifications Board)の日本版組織JSTQBが運営している資格です。ソフトウェア技術者がテスト技術をさらに向上させるため、ソフトウェアの品質・信頼性・安全性を保証するための重要な技術を学べます。
JSTQBの資格は国際的に通用する、世界中で認められている資格です。ソフトウェアテストに大きく関係する資格で、QAエンジニアにぴったりな資格と言えます。
IT検証技術者認定試験(IVEC)
IT検証技術者認定試験(IVEC)は、一般社団法人IT検証産業協会(IVIA)が認定する資格です。この資格試験はQAエンジニアに向いていて、ソフトウェア開発におけるテストや検証の実行スキルを証明できます。
この試験の大きな特徴としては、実務に重視した試験内になっていることです。この資格試験はレベル1~7まであり、自分の学習状況に合ったレベルを選んで受験できます。
ソフトウェア品質技術者資格(JCSQE)
ソフトウェア品質技術者資格(JCSQE)は、一般財団法人日本科学技術連盟が実施する資格です。資格を取得することで、ソフトウェア品質に関する知識を有していることが証明できます。
この試験はソフトウェアの品質向上の実現を目的としていて、QAエンジニアにとっても非常に適した学習機会と言えるでしょう。また、ソフトウェア品質工学に精通していることを証明できるため、キャリアアップにも役立ちます。
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験の内容をさらに発展させた資格試験です。この試験問題では、基本情報技術者試験を深堀した内容で、、実際の業務に関連した知識やスキルが問われます。用語の理解度を確認する問題や計算問題などが出されるため、表面的な知識だけでは合格は難しいでしょう。
基本情報技術者試験に比べると難易度が高めの試験となっているため、既にエンジニアとして活躍中の方や、今以上にエンジニアとしての専門性を高めたい人におすすめです。また、自分の得意分野に合わせた科目を選べるため、希望するキャリアに沿って受験できます。
QC検定
QC検定は、一般社団法人日本規格協会(JSA)が実施する資格です。取得すると、品質管理の知識があることを証明できます。
この資格は4級~1級まで級別に分かれており、学生や社会人など様々な人が挑戦しています。4級は派遣スタッフや学生向けの基本的な内容ですが、1級は企業内で品質管理全般の責任を持つ人の知識レベルを想定しています。
そのため、品質管理の知識をどのような企業で活かすか、品質管理をするレベルはどの程度かに合わせて階級を選択できます。業務の中心が品質管理であるQAエンジニアの方には、この資格の取得をおすすめします。
QAエンジニアの仕事のやりがい
これまでQAエンジニアとして働いていた経験を踏まえて、QAエンジニアの仕事にはどのようなやりがいがあるのかを説明したいと考えています。
インシデントを防げた時に、貢献できていることを実感できる
QAエンジニアとしてやりがいを感じた瞬間は、バグを見つけて致命的なインシデントを防げた時にあります。思わぬところにあった致命的ななバグを発見できたときは、特にやりがいを感じます。
例えば、私は以下のような経験をしてきました。
ログイン機能を備えたシステムを構築した時に、セキュリティ上に重要なバグがあることが明らかになりました。リリース前に修正できたのは良かったものの、見落としていたらサイバー攻撃に遭い、情報流出等の賠償責任を問われる可能性があったかもしれません。
このようにQAエンジニアには、ビジネスにおいて大きな損害が発生するのを未然に防ぐという、重要な重要な役割もあります。
プログラミングスキルや開発スキルが身に付く
QAエンジニアとしてのやりがいの1つには、新しいプログラミングスキルや開発スキルを習得できることも挙げられます。
単にドキュメントに従うだけではなく、製品の品質を維持しながら、少ないテストケースでより多くのバグを発見できるか考えることが重要です。QAエンジニアを突き詰めていくと非常に専門性の高い仕事になり、しっかり学習を続けることで学びになることもあります。
他の部署の人に感謝された時
自分が発見したバグによって他部署の人から評価されると、大変やりがいを感じます。
例えば、バグを発見しエンジニアに報告した時に「わかりやすい報告したおかげで、すぐに修正できた」と言われた時はとてもうれしい経験ですね。
QAエンジニアは未経験でもなれるのか
基本的に、QAエンジニアは未経験からでもなれます。もちろん、学歴や年齢で選ばれないケースもありますが、SESなどであれば、20代~40代でもQAエンジニアに転職することはそこまで難しくありません。特に具体的に何かしらの準備は必要なく、やる気と最低限の社会人スキルがあれば、未経験でもQAエンジニアになれるでしょう。
ただし、良いQAエンジニア、またはキャリアアップできるQAエンジニアとして転職できるかというと、話は少し変わります。ソフトウェアテスティングに対して多く投資している会社で、QAエンジニアとして能力を身につけやすい会社であれば、大学卒業の学歴はある程度必要です。特に日本を代表するメガベンチャーで働く場合は、高学歴が求められるでしょう。
また、IT業界の経験やテストに関する書籍を自分で読んでいるという経験があると、未経験の人でも採用されやすい可能性もあります。さらに年齢による就職難易度ですが、20代の人はすぐにQAエンジニアに転職しやすいです。もちろん、30代の人も頑張れば未経験でも転職できます。一方で40代になると、SESの会社などでなければ難しいかもしれません。その場合は、派遣会社でQAエンジニアになるという形になると思います。
QAエンジニアに向いている人の特徴
以下では、QAエンジニアに向いている人の特徴を解説します。次のような特徴に当てはまる人は、QAエンジニアの仕事に向いていると言えるでしょう。
- バグ探しが好きな人
- 細かいチェックが得意な人
- ドキュメンテーションの能力がある人
- 同じことの繰り返しをできる人
- ITの知識がある人
- コミュニケーション能力がある人
それぞれの特徴について、詳しく解説します。
バグ探しが好きな人
バグ探しが好きな人は、QAエンジニアに向いていると言えます。特にゲームの中のバグを発見したり裏技を見つけたりする人は、QAエンジニアに向いているでしょう。
バグ探しは、探索的テストを行う上で必要不可欠なスキルです。なかには、直感的に「このシステムには脆弱性があるのではないか」と感じる人もいるます。
細かいチェックが得意な人
QAエンジニアに向いている人の特徴の1つは、細いチェックが得意な人が挙げられます。
テストドキュメントを見て各テストケースを丁寧に確認し、仕様書やテストに記載されている期待値や手順を検証する場面で役立ちます。特にUIチェックでは、細かな部分まで気を配って徹底的に検証することが非常に重要です。
ドキュメンテーションの能力がある人
次に、ドキュメンテーション能力です。文章の作成能力と相手に伝わりやすい文章力のある人は、QAエンジニアに向いているといえるでしょう。
例えば、何らかのエラーが発生した時に提出したドキュメントを見て、エンジニアがそのバグを再現できるかどうかが非常に重要な点です。一方で、相手に的確に伝わらない文章を書いてしまうと、メッセージの内容が理解されずに、問い合わせる手間が増えてしまいます。
QAエンジニアとしての主な役割はバグを見つけて報告することなので、それができなければ仕事をこなすのは大変です。そのため、指示書やマニュアルの作成が得意な人は、QAエンジニアに向いていると言えるでしょう。
同じことの繰り返しをできる人
同じ作業を繰り返し正確に実行できる人は、QAエンジニアに向いていると言えるでしょう。
QAエンジニアの仕事には、製品をリリースする前にスモークテストを実施することが含まれます。スモークテストとは、製品をリリースする度に行われるテストで、テスター自身が手動で実施します。スモークテストのような繰り返し作業に抵抗がなく、毎日同じタスクを集中して正確に行える人は、QAエンジニアにピッタリです。
反対に同じことを何度も行うのが得意でない人は、QAエンジニアの仕事が向いていないかもしれません。
ITの知識がある人
QAエンジニアとして活躍するには、ITの知識を有している人やソフトウェア業界での実績がある人が向いています。QAエンジニアの仕事はソフトウェアを対象としているので、ソフトウェアの基礎知識が必要なためです。
例えば、ログインの実行・ファイル操作・ExcelやGoogle ドキュメント・Wordといったオフィス系ツールの利用は、前提として必要となります。さらに、テストの内容によっては、プログラミングの知識も必要です。さらに認証機能のようなキュリティに関わるテストを実行するには、その機能の使い方を把握しておかなければ、適切にテストを行うことができません。
一方で、プログラミングに関する知識が過度に深い場合、ユーザーの立場に立ってのテストが難しくなることもあります。ユーザー視点を重視するためには、ある程度の知識制限も必要です。テストの内容はケースバイケースで考えて、ITの知識はほぼほぼにしておくといいでしょう。
コミュニケーション能力がある人
QAエンジニアは、コミュニケーション能力のある人が向いています。相手の言葉を理解し、自分の考えも相手に伝えられるような双方向のコミュニケーション力が大切だと言えます。コミュニケーション能力はQAエンジニアにとって極めて重要で、多くのケースでこのスキルが必要です。
例えばバグが見つかった場合、エンジニアやカスタマーサポートにそれを知らせるケースなどがあります。バグを報告する場合は、バグの再現方法や、お客さんがバグだと述べている事象について分析した結果を、エンジニアやカスタマーサポートが理解できるように伝える必要があります。ちなみに、コミュニケーション能力とは対話だけでなく、チャットなどのオンラインでのやり取りも含まれます。
QAエンジニアの平均年収
ここでは、QAエンジニアの平均年収についての解説します。
QAエンジニア未経験者の平均年収
QAエンジニアに未経験で目指すなら、平均年収は250万円~350万円程度が相場と言えます。未経験の方がQAエンジニアを目指す場合、主に2種類の会社に分かれます。
・チェックリスト通りにテストを行ってもらう枠を提供する会社
・QAエンジニアとして育成を前提に採用する会社
未経験からQAエンジニアになりSES企業で働きながら昇進していく場合は、給与はそれほど上がらないのではないかと思います。理由は、チェックリストどおりにテストを行う業務は誰でも簡単にできるため、誰でも就職できるからです。そのような環境では個人のスキルは上がらず、給与を上げる必要は低いと考えられます。
ただし、新人を育成することを重視する企業や従業員の教育に積極的な投資を行う企業であれば、キャリアを積み重ねることで年収500万円~600万円を目指すこともかのうです。
QAエンジニア経験者の平均年収
QAエンジニアとして経験のある正社員の平均年収は、厚生労働省が運営する「job tag」によると約550万円ほどとされています。
しかし、経験者の年収は企業によって異なりますが、次のような経験がある人は年収が上がる可能性があるでしょう。
- テストケースの追加・改善
- テスト計画を作成
- 自動テストを導入し
- QAエンジニアのマネジメント
こういった能力を有しており、長年の経験で磨かれたスキルがあれば、年収600万円~900万円を目指すことが可能です。特にシニアQAエンジニアやQAマネージャーになれる人材が不足しているため、経験があれば年収アップも期待できるでしょう。
フリーランスQAエンジニアの平均年収
フリーランスQAエンジニアの場合は案件ごとに異なりますが、平均月収45万円~75万円程度が期待できます。ただし、フリーランスとしての高い月収を得るには、QAエンジニアの経験が欠かせません。
テスト計画の作成や品質管理の実務経験があれば、正社員以上の高い年収が期待できます。QAエンジニアの仕事は、フリーランスの分野において非常に多く求められています。そういった理由から、QAエンジニアとしての経験を積んでいる方は、フリーランスとしての道に挑戦してみるのも良い選択肢でしょう。
QAエンジニアのキャリアパス
QAエンジニアとしてのキャリアパスは、主に以下の4つがあります。
- シニアQAエンジニア
- QAマネージャー
- プロジェクトマネージャー
- QAコンサルタント
以下では、様々なキャリアパスについて詳しく解説しています。
シニアQAエンジニア
シニアQAエンジニアは、QAエンジニアの中でもスペシャリストとされる役職です。テスト計画などQAエンジニアに求められる知識を持っていて高い技術力もあり、チームのリーダーを任されることもあります。
また、テストケースの作成やテスト計画を立てるために、他の役割の方々とのコミュニケーションが必要です。QAエンジニアをしっかりと長期的に続けていけば、QAエンジニアのスキルを身につけることができ、シニアQAエンジニアを目指せるでしょう。
QAマネージャー
QAエンジニアからキャリアを積み上げていき、シニアQAエンジニアとなった後は、QAマネージャーという役職があります。QAマネージャーには「テスト作成・実行」だけでなく、プロジェクトリーダーとしての責任も求められるなど、QAエンジニアチーム全体をバックアップすることが役割です。
QAマネージャーはコミュニケーション能力はもちろんのこと、全体を統率するリーダーシップも重要になってきます。
QAコンサルタント
QAコンサルタントは名前の通り、品質戦略を提案する役割があります。テスト実行前に重要視される役職で、テスト開発などテスト全般の深い知識が必要不可欠です
長年にわたりQAエンジニアやQAマネージャーとして実績を重ねて自身のスキルに自信のある方は、QAコンサルタントの仕事に挑戦してみるのもいいでしょう。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、エンジニア全体の上位職です。プロジェクトを円滑に進めるために、スケジュールと予算を管理する役割があります。
QAマネージャーの役割と共通点もありますが、プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体を管理し、品質管理以外にも多様な責任を負っています。QAエンジニアとしてのキャリアを重ね、知識と技術が十分と判断されると、キャリアアップが期待できるでしょう。
QAエンジニアは将来性があり需要は高い
QAエンジニアについては「将来性がない」と言われがちですが、正しい知識を伝えるなら、今からでも目指し始めるのは決して遅くありません。「キャリアアップしない」「年収が上がらない」といった課題は、新しい職場を探したり、フリーランスになることで解決できるでしょう。
QAエンジニアは小さなバグを見つける達人で、今のネット社会では不可欠な存在となっています。将来性がないからといって投げ出さず、役立つ資格を取得して、求められるQAエンジニアを目指してみてください。
まとめ
今回は、QAエンジニアの仕事内容や役割について解説しました。QAエンジニアの主な業務は、ソフトウェアやシステムの品質を確保するためのテストの実行と管理です。そのため、製品の品質保証を担う重要な役割を担っています。
QAエンジニアとしてキャリアを築くには、丁寧なドキュメンテーション能力・IT知識・セキュリティスキルなどが求められます。専門性を高めつつ、マネジメントスキルも身につけていくことで、より高い役職を目指すことができるでしょう。QAエンジニアは、製品品質の向上に大きな役割を果たす重要なポジションであり、今後も需要が高まっていくと言えます。